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「あめゆじゆとてちてけんじや」 [思うこと]

賢治の詩「永訣の朝」には
(あめゆじゆとてちてけんじや)というリフレインが何度も入っています。

賢治の妹・トシが発した言葉なのですが
花巻弁と思われているこの言葉は実は花巻弁にはない、ということを
何度か眼や耳にした覚えがあります。

先日、といってももう3ヶ月くらい前になってしまいましたが
花巻出身のクマさんことSさんと、この件についてメールでやりとりをしました。

Sさんは、龍谷大学ミュージアム特別展での
花巻博物館長の講演「西域・宮澤賢治と多田等観」に行かれ、
(私は行けなくてほんとうにザンネン!!)
花巻から来られた方々と談笑された折、
「トシ の ・・ けんじゃ ・・ どう読みますか?」
との問いに そのまま読むとの事で、
「そんな、言葉が花巻に有りますか?」と聞くと「有りません、・・ けでじゃ ・・、が普通」との答え、
だったそうです。

以下《 》内はSさんからのメール。

《この言葉以外は トシ の発音を本当に音として正確に記録しようとの 賢治の意思を感じますが、

何故、此処だけ 花巻言葉に再現し得ない 文字にしたのでしょうか?

トシの兄への甘えを表したのでは・・ とのご意見がありました。(Iさん)

甘えだったら、 ・・・ けで~ ・・ のニュウアンスの変化で表すのが普通では・・? 》


そこで私は、いろいろ考えてみたのですが
Sさんに送ったのはこんな文章でした。

   私が思うのは、トシさんは亡くなる直前の重い状態で
  言葉に力もなかったと推測します。
  「おめゆぎ とてきて けでじゃ」が本来の花巻弁でしょうか?
  ほとんどささやくように言ったのだから、
  発音もままならず、
  「あめゆぎ」の「ぎ」は「じゅ」とつぶれ、
  「とてきて」は「とてちて」と舌足らずに。
  「けでじゃ」の「で」に力もはいらず「ん」と聞こえた、

   …のではないかなーという気がしてなりません。
  賢治はそのあえぎのことばそのままを写し取ったではないかと
  思うのですがどうでしょうか。

これに対するSさんの返信、
  
《その通りだと思います(私は心平さんの朗読にそれを感じたのです )。
賢治は、トシの息遣いまでも 遺したかった、私にはそう思えるのです、

      他の言葉の部分も、・・ とても足らない50音文字を用いて。

      少し、花巻の発音について・・・

      ① K 音は G or Gy 音(鼻濁音)の方向へ (あめゆぎ、あめゆぢゅ(ぢ(i・u))

      ② K 音は C or T 音の方向へ       (とてきて、とてちて、とてぎで)
      

       ①と②がまたその中間の音になるような気がします、 
       かな表記は単に本人の賢治覚えとさえ思えます。

以上 子音 ですが 当然 母音はもっと表しにくいのです。

        (音声学の知識が必要かと 思います。) 》

       
       

「賢治は、トシの息遣いまでも 遺したかった」

     …というSさんの言葉が胸に重く響きました。



なお、Sさんのメールにある「心平さんの朗読」とは
Youtubeにあるこの動画のことです。非常に貴重なものだと思います。
宮沢賢治「永訣の朝」 朗読・草野心平


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アヨアン・イゴカー

この「あめゆじゅとてちてけんじゃ」は
私には高校生の頃から「あめゆじゅとてちて、賢治や」と聞こえるのです。
トシコを限りなく大切に思っていた賢治が、トシコの言葉の中に自分の名前を呼んでいるように、
この音をいれたように感じられるのです。
単純に、聞きづらい音を模したと言う説が正しいとは思いますが。

by アヨアン・イゴカー (2014-08-10 22:09) 

kuma

 貴twitter(3月)で紹介の有った、学生のスクーリングレポート

 「あめゆじゅとてちてけんじゃ」~「永訣の朝」~の方言から見えてきたもの~
http://blogs.yahoo.co.jp/nametokogenmai3gou/40707661.html

を読んで、自分なりの考えを書いてみました。

 その後、花巻博物館長の講演時、レポートを指導しブログにアップされた教授と、
 賢治の朗読をされている、花巻のグループの方々と、
学生さんのレポートについて、
また、このブログにご紹介いただいた方言についての
やり取りをしました、チョー久しぶりの花巻弁を使って・・・・
 
by kuma (2014-08-14 21:43) 

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