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『宮沢賢治とサハリン』 [本]

少し前になりますが、藤原浩さんの
『宮沢賢治とサハリン 銀河鉄道の彼方へ』(東洋書店)
という本を読みました。

1922年11月、最愛の妹トシを亡くした賢治は
しばらく詩を書きませんでした。
約半年後にようやく詩作を再開するのですが
再びあふれるような作品を生み出していくきっかけになったのは
このサハリン紀行でした。

教え子の就職斡旋という表向きの目的で
1923年8月、樺太へと旅立ちます。
その日程を細やかに検証していったのが本書です。

表向きの目的、というのは、この旅行は賢治にとって
トシの魂の行方を追いかける、そして、
自身の心になにがしかのけじめをつけるという重要な意味があったのだと思われます。
本書を引用すれば
「人間として、表現者として、乗り越えるべきものを越えてゆくための旅であった。」
というそのとおりだったと思います。

そしてその時の心象を描いたのが
「オホーツク挽歌詩群」と呼ばれる作品群です。

1923年7月31日の晩に花巻を発った賢治。
どこでどの列車に乗ったか、
どこでどう過ごしたか…
賢治の足跡を克明に追いかけた本書を読みながら
読者もまた、賢治と一緒に旅をしているような気になってきます。

第2次世界大戦によって絶たれたサハリンへの道。
その道が再び通じるようになって実現されるようになった旅行と
それにともない可能になった賢治のサハリン紀行の研究。
すでに何度か賢治を追うツアーも組まれているようで
今後もその旅行者数は増えるのでしょう。
いつか私も行けることを願います。

決して厚いとは言えないこのブックレット。
でも、そこに詰まっているものはとても大きい。

賢治は北紀行で何を想い
何を掴んだのか…。

私の心もまた、本書や「オホーツク挽歌詩群」を読むたびに
賢治と一緒に北へ向かい、
チモシイややなぎらんやあかつめくさのゆれる原野を
彷徨う賢治にそっと寄り添っている……のです。




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