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「萩尾望都作品集 なのはな」 [本]

収録されている「なのはなー幻想『銀河鉄道の夜』」のタイトルに惹かれて
萩尾望都さんの最新刊「萩尾望都作品集 なのはな」(小学館)を読みました。


「あの日」から、私は胸のザワザワが止まらなくなった。今は、きれいで美しいものは描けないと思った。ずっとザワザワしていた気持ちが、これを描き終わった時、ちょっと静かになりました。(帯より)

3.11以降、誰もが立ち止まり
なにも手に付かなくなってしまいました。

でも、そんな中に一筋の光を見いだしたとき
萩尾さんは描きたいという意欲を取り戻し、
筆を取る決心をなさったのだとあとがきに書かれています。

「なのはな」の見開きいっぱいに描かれた大きな一場面、
夢の中で出会った不思議な少女に
主人公ナホが種撒き機を抱かえて言うセリフ

「あなたは…チェルノブイリにいるあたしだね?」
「あたしはフクシマにいるあなた」

そのページに激しく胸を揺さぶられました。

私は福島の人々を心から自分のこととして
想ったことがあっただろうか。
同じく東北沿岸部の人々を、そう感じたことがあっただろうか。

(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
 みんなのおのおののなかのすべてですから)

賢治が『春と修羅』の「序」に書いた真の意味が
今万人に問われている気がします。

「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」
ぼんやりとしか理解できなかったことが
原発事故によって、理屈としてはっきり理解できるようになったのは
実に悲しく情けないことだと思いますが
こんなものを造りだしているうちは
人類は破滅に向かっていることは間違いはないのです。

ナホのその後を描いた「なのはなー幻想『銀河鉄道の夜』」は描き下ろしで
賢治の『銀河鉄道の夜』と『ひかりの素足』とのコラボです。
以前私が京都の法然院で鑑賞した中所宜夫さんの能楽らいぶ「光の素足」
萩尾望都さんも以前ご覧になられ、
作品へのインスピレーションを得られたことが
あとがきに書かれています。

それを読み、あの時の夢幻かつ無限の空間が蘇ってきました。
もう一度あの舞台を拝見したいです。

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