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「夢見るビートルズ」高橋克彦 [本]

高橋克彦さんの自伝的小説『幻日』(小学館)に収められている一遍、「夢見るビートルズ」。

高橋さんが音楽に精通しておられることは
作品やウェブサイトなどから知ることができ、
ビートルズに初めて会った日本人ファンだということも
何かで読んではいたのですが…

演劇部の活動や音楽に熱心で
受験勉強にも身が入らずにいた高校2生の岳彦(克彦)少年。
3年になり、休学して従兄の誘いでヨーロッパ旅行に同行することになったのです。

従兄とその友人の3人で出発したのは1964年9月。
意見の違いから衝突し喧嘩したり、予定を変更したりしながらも
約一ヶ月後、ロンドンにたどり着きます。

そこで岳彦少年は、意を決してビートルズの公式ファンクラブのドアを叩く。
二人に笑われながらもこの旅行の最大の夢を叶えるために。

そこにいたマイケルにおずおずと差し出した自己紹介の紙。
地球の反対側からはるばるやってきた少年の出現に驚きと感嘆のマイケル達。
「ビートルズには会えないけど、会員証ならすぐ作ってあげる」


翌日になって、従兄も一緒に再び訪れると、
明日のグランビル劇場での公開録画に招待されることになったのです。

それから後のことは、読みながらドキドキワクワク、
まるで自分が岳彦君になったような気持ちで興奮して一気に読みました。

黄色い歓声の女の子達に混じって
本物のビートルズを目の前にしていることの、夢見心地。
「カンサス・シティ/ヘイヘイヘイヘイ」「ボーイズ」「アイム・ア・ルーザー」
たった3曲でも、ファンにとっては卒倒するほどの興奮とよろこび。
私も中学1年に初めて聴いて以来のビートルズファンなので
想像するだけで鳥肌が立つほどのエキサイティングな場面。

ところがそれだけではない!
なんと、岳彦君のヤッケの日の丸を認めたポールによって
ステージに呼ばれた二人。
ジョンに促され、4人に囲まれて中央に立つ二人。

こんな夢物語が実際にあったことなんだ…と私はまるで
自分のことのように感激していました。

「金持ちのドラ息子なんかじゃねえ。泣き言一つ言わねえで付いて来る。おめえが居なきゃとっくにあいつと喧嘩別れしてたさ」
という従兄の言葉どおり、
他人任せではなく
強い意志と勇気でつかんだ夢だからこそ、の感動。

さらにはこの旅行で、岳彦君は
日本人として自国の文化を知る必要性も大いに感じ
結果として浮世絵への興味と探求心を得たのだと思います。
それは彼のその後の作家への道へと導くものでもあったということは
ビートルズと遭遇したことも含めた様々なこの旅行での体験は
彼にとって必然だったのですね。

人にとって、偶然なんていうものはなくて
すべてはいろんなものに繋がっていくし
幾つになっても、冒険やチャレンジ精神は無くしてはいけないのだよ、と
この短編に励まされた気がします。

この頃のビートルズは映画「ハードディズナイト」が封切られ
人気も実力も揺るぎないものへと一直線に突き進んでいたとき。
彼ら自身も恐らくもっとも無邪気に成功を楽しんでいたのではないでしょうか。
そんなビートルズに会って生で演奏を聴き話をしただなんて
やっぱりどう考えても、凄いことなのです。

ああ、タイムマシンに乗って1964年に飛び、
岳彦君にくっついて行きたかった!

1964年の10月3日、ロンドン・グランビル劇場にて収録の
アメリカのTV番組『シンディグ』の映像はこちら→sindig
この会場に若き日の高橋克彦さんがいたのですね。

映像はよくありませんがこちらも→フルバージョン
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