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目吉センセー [本]

一作読めば次も読みたくなる高橋克彦さんのホラー&ミステリー。

『闇から来た少女ードールズ』(中公文庫)を何気なく手に取ったら
もうすっかりこの世界に引き込まれてしまいました。

この一作目を読み終えた後には、
恐ろしいはずの「目吉センセー」に深い愛情を覚えている自分に驚き、
私はどこかおかしいのだろうか、と思ってみたり…

そしてその続きが読みたい想いにかられて調べてみたら
やっぱりやっぱり、連作されているシリーズものだったことがわかり
気づけばアマゾンで即、3回もポチリとしていました。

2作目以降の作品を読んで、
私の感覚が決してヘンなわけではないことがわかってちょっと安心。

(ネタバレになってしまうと楽しみが半減してしまうといけないので
一作目だけは読み終えてから以下を読んでくださった方がいいかもしれません)



『闇から覗く顔』『闇から招く声』『月光天使』の3作を一気に読んだのですが
まぁ、その怖いこと。
寝苦しい真夏の夜に読むにはいいシリーズかもしれませんが
特に3作目の『闇から招く声』は、冒頭から残虐な殺人現場の描写から始まり
以前はずみで『冷たい熱帯魚』という、思い出すのも嫌な、趣味の悪い映画をみてしまってから
もともと嫌いだったスプラッターものがもっと嫌いになった私だったので
うへー、と思ったのでした。
しかし、そこは高橋センセー。
ただ怖い気持ち悪いだけでは終わらないので
夢中になって読み進んでしまいました。


4作目の『月光天使』はもう、ホラーもサスペンスも越えた壮大なファンタジー。
「ファンタジー」というと現実味のないおとぎ話の世界というイメージを持つ人もいるかもしれませんが
実はファンタジーは真実を表しているものだと私は感じています。

ともあれ、時にお茶目で頼りになる目吉センセーが大好き。
シリーズの続きは雑誌ですでに発表されているようなのですが
私は単行本になってからのお楽しみにしたいと思います。
いよいよ目吉センセーの前世のことが明らかになるのでしょうか…。


わたしがこれらを読んで感じたのは
人は皆、じつは8歳の少女に生まれ変わってしまった目吉センセーと同じなのではないか、と思ったこと。
自分がどこから来たのか、何ものだったのかを思い出せないでいるだけで
物心ついてからは、私はなぜここにいるのか、何者なのかを思い悩む。

身体は入れ物にすぎず、
たまたま在る時代にその環境にいる「ある人」の身体に入り込んで生まれてくるだけ。
本来、魂は自由で生き生きとしているもの。
人は一生をかけてそのことを思い出すために生きるのかもしれません。
突然自分の身体が小さな女の子のものであることを
最初は理解できずに驚き哀しんだ目吉センセーのように
「オレはなんでここにいるんだ」ともがき苦しむ。
窮屈で理不尽でたまらなく生きていることを否定したくなったり嫌悪したりもする。

でも、一旦、自分は彼方から来て、また彼方へと戻っていくのだと気づいたとき
初めて魂はふたたび解放される。
自由な魂ほど、強いものはないように思うのです。

そして…。
私はいったい誰なんだろう?と考えてみる。

1920年代にひっそりと誰かを想っていた少女だっただろうか。
それとも1960年代に長い髪に花を挿しバンダナを巻いて歌っていた女性だっただろうか…。
(またそっちかい、とどこからか声が聞こえた気がしますが…)

ドールズ写真.JPG


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